皆さん、こんにちは。
筆者のキョン(@kyon2021f)です。
今回は花ちゃん出演映画「トイレのピエタ」について紹介します。
本作は漫画家・手塚治虫が死の間際に残した日記が原案になっている作品。
その原案をベースにラブストーリーが展開されますが、日記自体の解釈もさまざまあるため、作品の賛否も分かれているようです。
一般的に生存率が低いとされる胃がんにおかされた主人公が、従来以上に生きる意味を考える。
人はなぜ生きるのか?死にたくないから?という究極の二択が印象的な作品です。
以下、ネタバレ注意。
作品情報
【公開日】
2015年6月6日
【原案】
手塚治虫「トイレのピエタ」
【監督】
松永大司
【出演者】
野田洋次郎、杉咲花、リリー・フランキー、市川紗椰、大竹しのぶ、宮沢りえ
【あらすじ】
余命3か月を宣告された宏(野田洋次郎)は、出会ったばかりの女子高生・真衣(杉咲花)にすぐに死のうかと言われるものの、死ぬことはできなかった。美術大学を卒業後、窓を拭くアルバイトをしながら何となく生きてきた宏だったが、死を目前にしながら純粋な真衣に惹(ひ)かれていく。
引用:yahoo映画
主人公・宏という人間
美大卒でありながら現在は窓ふき清掃員をやっており、高いところから落ちても「ただ死ぬだけ」と非常に冷めた青年です。
仕事を終えるとパソコンを見ながらコンビニ弁当を食べる・・・絵に描いたような退廃的な生活。
学生時代は絵に没頭していたようですが、画家になるという目標を失った今、彼の生きる目標はありません。
目標がなければ生きている意味さえも失ってしまうと言わんばかりの鬱屈とした雰囲気です。
物語の前半1時間ぐらいはこの鬱屈とした雰囲気がずっと漂います。
そのような中、自分が胃がんにおかされたことや真衣と出会ったことで、生きている意味がないなら「なぜ死なないのか?」ということを考えるようになります。
それまで人と関わることのない生活、関わることさえも拒絶していたような生活が病気と新しい出会いによって変化したように思います。
人と関わることで、「自分に対して何かをしてくれる人」と「何かをしてあげたい人」が生まれ、自分がひとりの人間として扱われる。
こうした人との交流を通じて宏は笑顔を取り戻しました。
野田さんがこの退廃的で絶望的な青年をうまく演じています。
もはや何にも心を動かされることなく、そして自分が何者かさえ見失っている・・・。
でも、人と関わるなかで自分を取り戻したとき、宏は素敵な作品を残して天国に旅立ったのだと感じました。
生と死
物語の中で何度も生きるか死ぬかの選択肢が提示されます。
あるときは一緒に死のうと誘われ、あるときはなぜ生きるのかを問われる。
これは人間の究極のテーマだと思います。
自分がなぜ生きるのか、逆になぜ死なないのか、筆者はしっかり自分と向き合って考えたことがありません。
生きる理由は人それぞれあるのだと思います。
でも、自分が誰かに「死んでほしくない」と思われる、もしくは自分が誰かのことを「死んでほしくない」と思う・・・これだけで生きる意味になると感じます。
宏は真衣と出会うことで、生きていてほしいと思われ、また生きていてほしい(そばにいてほしい)と願うようになったことが作品から伝わってきます。
その生きる意味を体現したものがピエタだったのであり、聖母のように宏を見つめる女性(真衣がモデル)の表情はすごく穏やかなものだったことが印象的です。
真衣
女子高生ながら友だちもおらず、家では祖母の介護をさせられている少女を花ちゃんが演じています。
「死にたい」と日ごろから思っているにもかかわらず、簡単には死ねないことを、身をもって経験している真衣は、そのことを宏に伝える存在です。
また、「パンツ見たい?」「キスってどんな感じ?」と背伸びして大人に近づこうとする言動も印象的。
大人への憧れ=自立=現状からの解放ということなのだと思います。
解放されるための死は、そう簡単には実現せず、大人の階段を早足で上ることも今の真衣にはできていません。
乱暴な言葉で荒々しい場面も多いですが、宏の心に刺さる・響く言動をしていることも事実。
宏との関係は「恋」というには少々チープな、なんとも言えない依存しあった関係に見えます。
ただ、お互いを必要としていることには変わりなく、お互いの生きる意味になっている。
プールで魚のように泳ぐシーンや二人乗りをするシーンなど、二人の気持ちが通じ合った場面は美しく、そして青かったです。
まとめ
手塚治虫の原案を扱うことに対する批判もあった本作。
野田さんの初主演作品であり、主題歌「ピクニック」も本作にちなんだ歌詞になっています。
花ちゃんは約1年に渡るオーディションのすえに本作出演が決定したそうです。
感情を失った、ある意味「無」の宏に対して、脇を固める俳優陣の演技が際立っており、評価が二分しているだけに、それだけ様々な解釈があり、心に響くものもあるのだと筆者は思います。
ぜひ皆さんもチェックしてみてください。
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